2025年のNHK朝ドラ『あんぱん』で登場した「あんぱん10銭」。
そこで話題になっているのが、
・当時はなぜ“高級品”とされていたのか?
・時代背景と共に見る“あんぱん”の価格の変遷とは?
ということです!

そこでこの記事では、上記の内容を順番に解説していきます!
あんぱん10銭今の価値で値段はいくらになる?
昭和2年(1927)の10銭は、カレーライスやそばと同額であり、現在の物価にざっくり換算すると約1000円前後に相当します。
とはいえ当時の女子日給は50〜70銭、男子熟練工でも1日1円強。
つまり日給の1割を超える“ご褒美価格”で、田舎暮らしの朝田家にとっては特別な嗜好品でした。
柳井家がさらりと買い支えた背景には、都市部の富裕層ならではの経済力が見え隠れします。
② 女子日給50銭→パン5個分
③ 月給50円の大卒=パン500個分

考察
貨幣価値の単純換算だけでは、当時の社会的意味までは浮かび上がりません。
高価に感じるかどうかは、①都市/地方、②職業/階層、③“パン”という外来文化への憧れ――この三つの軸で大きく揺れ動きます。
パン文化がまだ珍しかった地方では「話題の新味=贅沢」の構図が強調され、ドラマでも屋村の持ち込むあんぱんが“希望の象徴”として機能しました。
次の見出しでは、その象徴性を現代スイーツと比較しながら掘り下げます!

この時代のあんぱんは今で言うと何?
1920年代の地方では、パンそのものがまだ珍しい“モダン文化”でした。
特に餡を包んだ和洋折衷のあんぱんは、ハイカラ感と和の親しみやすさを併せ持つ“プチ贅沢ブリッジフード”。
🏃♀️#あんぱんオフショット🖌
「朝田パン」が開店して8年経ちました👏
御免与商店街で順調に営業中です🍞
焼きたてのあんぱんと一緒に✨#今田美桜 #江口のりこ #阿部サダヲ#朝ドラあんぱん pic.twitter.com/hYx9lhgDCj
— 朝ドラ「あんぱん」公式 (@asadora_nhk) April 13, 2025
現代に置き換えると、SNSで行列必至の生ドーナツ専門店の限定メニューや、デパ地下の高級食パンに近いポジションです。
価格帯も500円以上、パッケージも洒落ていて「自分へのご褒美」「ちょっとした手土産」に選ばれる――そんな立ち位置がぴたりと重なります。
② 和×洋のハイブリッド
③ 行列がステータスを可視化

考察
昭和初期は、鉄道網の発達と百貨店の隆盛で「都市の味」を地方へ持ち帰るムーブメントが始まった時代です。
屋村草吉のパンも、柳井嵩の絵や千代子の洒落っ気と相乗し、“都会の香り”を田舎へ輸出する役割を果たしました。食を介した自己表現は今も昔も変わりません。
その多層的魅力が、ドラマ視聴者の“自分事化”を呼び、お菓子メーカーとのコラボ商品が連日完売――という現代の盛り上がりに繋がっています。
次章では、あんぱんを高級品たらしめた社会的・技術的トリガーを3つに絞って解説します!

あんぱんが高級品となっていた3つの理由!
パンを“高級”に押し上げた背景には、
①製粉・製餡の技術革新、
②都市富裕層による“西洋風グルメ”ブーム、
③媒体(新聞・雑誌)のパブリシティ効果
――この三つの歯車ががっちり噛み合っていました。
特に製粉機の国産化は、国産小麦×安定供給を実現しつつも、まだ流通量が限られていたため価格が高止まり。
そこへ「西洋式食文化=進歩の象徴」を打ち出す広告が重なり、パンは“モダンとハレ”を体現する星へ昇格しました。
② “洋食=進歩”イメージ戦略
③ 新聞連載&映画広告の波及力

考察
「技術革新」だけなら価格は下がるはず。
しかし昭和初期のパン市場は、輸入小麦依存と国内需要の拡大が並走し、“量は増えないのに欲しい人が急増”というクラシカルなレアリティ構造が発生しました。
結果、価格はカジュアルフードよりワンランク上に固定され、「高いのに売れる」ことでブランド化が加速。
これは現代のクラフトチョコレートやビーントゥバープリンに通じる現象です。
もはや値段以上に“語れるストーリー”が価値を生む――そんな文脈を、屋村の10銭パンは私たちに教えてくれます。
過去と今の比較!月給で買える“あんぱんの量”を一目で比較!
職種・立場 | 月給(円) | 買えるあんぱん数 |
---|---|---|
女子平均賃金 | 18円 | 180個 |
熟練工/大卒初任給 | 50円 | 500個 |
モデル月給 | 月給(円) | 買えるあんぱん数 |
---|---|---|
大卒平均初任給 | 210,000円 | 1,400個 |
数字から読み解く3つのポイント
- 購買力の伸び――約1世紀で「月給あんぱん数」が500個 → 1,400個へ。
- 実質価格の下落――10銭(所得比で日給の1割超)が、いまや150円(平均日給の1%未満)。
- 階層間ギャップの縮小――1927年では性別や職種で3倍開くが、現代では同じ価格でほぼ同じ数量を享受。
なぜ現代は“安く・大量”に食べられるのか?
1927年のパンは「高価な輸入小麦+半手作業生産」。
一方、現代は以下の要因でコストが大幅に圧縮されています。
- 農業技術の飛躍:小麦収量が約4倍に向上し、国内外ともに原料価格が安定。
- 製パンの完全オートメ化:高速ミキサー・トンネルオーブン導入で人件費を削減。
- サプライチェーン最適化:冷凍生地や共同配送で廃棄ロスが激減。
- 量販店競争:コンビニ・スーパーがプライベートブランドを展開し、価格を規模の経済で押し下げ。

まとめ
10銭あんぱんの価格を2025年の感覚で読み替えると「150円程度の高級スイーツ」に落ち着きます。しかし当時は日給の1〜2割を占める“ハレの食”であり、パンという新文化をまとった憧れの象徴でした。
柳井家が見せた気前の良さは「都市富裕層が地方へ運ぶモダンの香り」、そして屋村草吉の行動は「高揚を食で共有するコミュニティ形成」の物語。
🏃♀️#あんぱんあれこれ🖌
8年の歳月を経て、石窯も立派に進化しました🌸
レンガの石窯、オシャレですね✨#朝ドラあんぱん pic.twitter.com/aSy2210Cmj
— 朝ドラ「あんぱん」公式 (@asadora_nhk) April 14, 2025
私たちが高級食パン専門店で行列する理由も、本質的には同じ「ストーリーと自分を接続する快感」なのかもしれません。
ドラマが終わった後、ふと和菓子屋のあんぱんを手に取ったとき――それは過去と現在を結ぶ小さなタイムトラベル。値段に潜む時代の息遣いを感じながら、次の“ご褒美”を探しに出かけてみてはいかがでしょうか。
